AhRが機能する免疫担当細胞の解析 AhRKOマウスでは、腸の炎症が亢進する。また無菌的に飼育されたAhRKOマウスにがんは生じなかったことから、AhRは外部環境に対する生体防御的な役割をもつと考えられる。この役割は、どの細胞によって担われているのだろうか。本年度はAhRが機能する細胞を調べる目的で、免疫担当細胞について検討した。 デキストラン硫酸(DSS)を投与する事により、マウスに大腸炎を誘導した。1%DSSを飲水投与すると、AhRKOマウスでは下痢や血便がみられ、有意な体重の減少が観察された。正常マウスではこのような影響はみられなかった。DSS投与後の炎症性サイトカインは、小腸および結腸に比べて、盲腸で高かった。また盲腸の免疫染色により、マクロファージおよびT細胞が集まっている事が示された。AhRKOマウスはDSSに高感受性であり、組織間で比較すると、盲腸は形態的にも、機能的にもDSSの影響を受けやすい組織であることが示唆された。 大腸がん発生における免疫細胞と腸上皮細胞との相互作用 サイトカインの細胞増殖に与える影響を調べる目的で、生後およそ1週間のマウスの腸から得た細胞をコラーゲンとmatrigelを含む培地中で初代培養した。形成される細胞塊を共焦点レーザー顕微鏡で観察すると、E-cadherin抗体で認識される腸のクリプト様の構造を形成し、その底部は増殖マーカーであるKi67(+)細胞が配置された。細胞塊の凍結切片を免疫染色すると、Ki67(+)細胞と分化マーカーであるCK20(+)細胞の層は分離されており、培養系においても生体に近い形で上皮細胞の増殖・分化が調節されていることが示された。 この培養系を使って、上皮細胞の増殖を調べた。15万の細胞をまいて5日目の細胞塊の数はおよそ50であった。 1-5ng/ml IL-1βを添加すると、生じる細胞塊の数は20-50%減少する傾向がみられた。しかしながら現段階ではWTとAhRKOの比較は困難であり、さらに実験系を整える必要がある。
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