研究概要 |
申請者らが見出した新規血管新生因子PILSAPは、血管新生だけでなく、脈管形成にも必要である(Genes to Cells, 2006, 11: 719-29)。このPILSAPの作用を分子学的に解明するため、マウスES(胚性幹)細胞の分化培養系を用いてプロテオーム解析を行ったところ、ピグペンという分子が得られた。このピグペンも血管新生に関与するのかを検討した結果、in vitro、in vivoの両方で血管新生に促進的に作用することが明確となった(Cancer Science, 2010, 101: 1170-1176)。 PILSAPとピグペンが血管新生においてどのように相互作用をするのかを確かめるために、先ず両者の細胞内局在を検討した。マウスES細胞の培養系で内皮細胞系と血球系が分化する8日目の胚様体(EB: embryoid body)ではPILSAPは細胞質に、ピグペンは核に局在していた。PILSAPのアミノペプチダーゼ活性を欠失したミュータントEBではピグペンの発現が有意に低下していた。ESの分化系においてピグペンの発現を抑制すると、PILSAPの場合と同様に血管内皮細胞への分化が抑制された。代表的な血管新生因子、血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endoethlial growth factor)によりその局在がどのように変化するのか、その際、両分子は結合するのか等を、マウス血管内皮細胞株を用いて検討した。VEGF非添加時ピグペンは核に、PILSAPは細胞質(特に核周囲)に主に存在し、VEGF添加により細胞質のPILSAPは核に移動してピグペンと共局在した。この現象はIP-IBにより確認された。 以上より、ピグペンがPILSAPと協調して血管新生ならびに脈管形成にも関与することが明らかとなった。
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