本年度研究の第一目的であるNox1以外の新規標的遺伝子として、大腸癌由来細胞から172クローンをクロマチン免疫沈降で単離した。そのうち7クローンは癌関連のTOPORS遺伝子で、発癌におけるGATA-6によるTOPORS遺伝子の発現制御に焦点を当てることにした。TOPORS遺伝子上流-2.5kbまでの領域にGATA結合配列が8ヶ所あり、GATA配列を順次欠損させたプロモーター断片のシリーズを組み込んだルシフェラーゼレポーターと変異GATA配列を含むEMSA用プローブを作製した。CaCo2細胞にGATA-6shRNAアデノウイルスを感染させてGATA-6の発現を抑えるとTOPORSの転写が促進し、GATA-6発現ベクターを導入してGATA-6の発現を上げるとTOPORSの転写は抑制されることがわかった。また、レポーターアッセイ解析から、-415/-389のGATA配列が重要であることを明らかにした。-415/-389のGATA配列を変異させるとGATA-6は結合せず、GATA-6によるTOPORS転写の抑制はおこらないことを証明した。このようにGATA-6は他の核内因子と協働して癌関連TOPORS遺伝子の発現をトランスに抑制することを明らかにした。次にGATA-6の標的遺伝子を網羅的に検索することを目的とし、CaCo2細胞にGATA-6shRNAアデノウイルスを感染またはControlshRNAアデノウイルスを感染させ、それぞれのmRNAからCy3標識プローブを作製し、遺伝子発現をDNAマイクロアレイチップを用いて50683遺伝子を対象に解析した。その結果、GATA-6により転写が50%以上抑制される遺伝子が1161個、GATA-6により転写が2倍以上に促進される遺伝子が719個あることを明らかにした。
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