WntのCo-receptorであるLRP6の細胞質ドメインに結合する新規蛋白として、Keratin associated protein13(Krtap13)を、見いだした。驚いた事に、Wnt非存在下、Krtap13を強制発現させるだけで、Wnt経路の著しい活性化が生じる事が、明らかになった。Krtap13は、毛包、汗腺などでの発現が知られているが、その機能やWnt経路との関係は不明である。 Krtap13の強制発現は、β-catenin蛋白質の蓄積を誘導した。また、LRP6とDv1はKrtap13を介してternary complexを形成する事が判明した。蛍光免疫二重染色を行うと、Krtap13とDv1は細胞膜上でDot状に共局在した。Krtap13は、LRP6-Dv1凝集体を形成させ、そこへ、Wnt経路の負の制御因子Axinを引き寄せる事を介して、Wnt経路を活性化しているとのモデルが考えられた。また、Krtap13は、細胞の増殖を促進する事、さらにKrtap13の発現は、Wntの標的遺伝子、DKK1の発現を誘導する事が判明した。 Krtap13の高発現の影響を、in vivoで解析するため、公汎な組織での発現が可能なCAGプロモーターとヒトKrtap13のcDNAの間にlox-polyA-lox配列を挿入したTrans gene(Tg)を作成した。このTgは、Creの存在下、Krtap13を発現し得る。この遺伝子を導入したTgマウスと組織特異的にCreを発現するTgマウスを交配する事によって、組織特異的にKrtap13を高発現させる。現在、4系統のTgマウスを作成しており、Tgマウスでの腫瘍の発生の有無や、器官形成への影響を解析している。
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