柳川は、WntのCo-receptorである一回膜貫通型蛋白LRP6 の細胞質ドメインに結合する蛋白として、Keratin associated protein 13 (Krtap13)を、見いだした。Wnt非存在下、Krtap13を強制発現させるだけで、Wnt経路の著しい活性化が生じた。Krtap13は、細胞膜上で、LRP6-Dvl凝集体を形成させ、そこへWnt経路の負の制御因子Axinを引き寄せる事を介して、Wnt経路を活性化しているとのモデルが考えられた。 Krtap13の強制発現によるWnt経路の活性化が与える影響をin vivoで解析する為、公汎な組織での発現が可能なCAGプロモーターとヒトKrtap13のcDNAの間にlox-polyA-lox配列を挿入したTrans gene (Tg)を作成した。 このTgマウスと組織特異的にCreを発現する種々のCreマウスを交配する事より、Krtap13を種々の組織で高発現させる事が出来る。Keratin5-Creマウスとの交配による、皮膚での発現の場合、生後8ヶ月をすぎると、Recombinant-Tgマウスの25%が、アトピー性皮膚炎と類似した炎症を示した。白内障を併発する個体も観察された。一方CAG-Creマウスとの交配によっては、R-Tgを持つマウスは、仔マウスの5%と低い確率で生まれてきたが、そのうちの15%のマウスは、生後1~2年を経ると、悪性リンパ腫/白血病を発症した。更に、albumin-Creマウスを用いて、肝臓でのKrtap13の高発現の効果も解析中である。
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