研究概要 |
低分子量GTP結合蛋白質Ralは多くの細胞成長因子の下流で働くシグナルのスイッチである。その活性は、活性化因子(GDP/GTP交換因子、GEF)と不活性化因子(GTPase活性化蛋白質、GAP)のバランスにより制御されている。RalGEFの多くはRas癌遺伝子の下流で活性化されることが知られている。RalGAPの分子実体はこれまで不明であったが、最近、我々は世界に先駆けて報告した(JBC,2009)。本研究では癌化におけるRal/RalGAPの役割について明らかにすることを目的とした。 平成22年度はヒト癌細胞株、癌組織でのRalGAPの発現を解析し、浸潤性膀胱癌においてRalGAPの発現が喪失していることを見いだした。免疫染色による検討では膀胱癌の進展に伴いRalGAPの発現が減少していた。また、浸潤性膀胱癌では良性の表在性膀胱癌に比べGTP型Ralの量が増加していた。RalGAP陰性の浸潤性膀胱癌細胞株にRalGAPを再導入することで、膀胱癌細胞の浸潤、転移が抑制された。現在、既に作成したRalGAP遺伝子改変マウスを用いて、BBN投与による化学膀胱発癌を解析中である。 RalGAPの活性制御機構は不明であるが、RalGAPがAktによりリン酸化されることを見いだし、リン酸化による活性制御機構を解析した。また、ラット脳細胞質より新規RalAエフェクター分子を見いだすことに成功した。
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