研究課題
がん遺伝子Rasは、様々な腫瘍で活性化変異が見られ、Rasのシグナルの制御は重要な課題である。本研究では、マウス線維芽細胞由来のNIH3T3細胞を活性化Ras遺伝子でがん化した細胞株”DT”を用いて、Rasによる悪性形質を抑制する活性を持つ、すなわちRasの介するシグナルを抑制する遺伝子を、cDNA発現ライブラリーからスクリーニングすることにより同定することを試みた。スクリーニングに先立ち、phagemid型のcDNA発現ベクターを開発し、これを用いて、完全長cDNAに富んだラット脳cDNA発現ライブラリーを作製し、今回の発現クローニング法に用いた。DT細胞にcDNA発現ライブラリーを導入後、悪性形質の抑制された接着性の強い細胞を選別し、最終的には顕微鏡観察により正常復帰株“リバータント”を単離した。一連の実験でリバータントが700個以上得られ、そのうちの約半分を用いて、リバータントの中からリバータントを誘導する活性を持つと思われる候補遺伝子cDNAを80個得た。Rasの下流のシグナルに関わるMAPキナーゼやAKTキナーゼのリン酸化について、これら候補遺伝子をトランスフェクションしたことによる影響を調べた後に、候補遺伝子の中から、あまり研究のされていないものに特に注目して研究を進めた。例えば、リバータントHK2-2A4に含まれていた遺伝子は、データベースGeneCardの情報を見ると、核内に存在しクロマチンの形成の制御に関わっていると考えられていたが、実際に実験を進めると、タンパク質はほとんど細胞質に存在することが明らかとなった。また、結合タンパク質を調べるとMAPキナーゼ関連キナーゼなどが同定された。このように、候補遺伝子の中には、これまでRasの介するシグナルとの関係が知られていないものも含まれており、今後、創薬のためのヒントを提供すると考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biology Open 1:
ページ: 458-466
DOI:10.1242/bio.2012638