研究課題/領域番号 |
22501011
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石崎 敏理 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70293876)
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キーワード | Rho / mDia / アクチン細胞骨格 / 細胞悪性化 / 細胞内情報伝達 / 細胞移動 |
研究概要 |
Rasによる細胞の悪性化、腫瘍形成におけるRho-mDial signalingの役割解明 mDia1KOにDMBA/TPAを塗布したところ、mDia1KOでは1匹当たりの背部に発生するpapillomaの数をWTマウスと比較すると著しく減少する。またpapillomaの発生した時期もWTマウスに比べ顕著な遅延を認めた。また、これらのマウスより採取した皮膚の細胞では、Ha-rasの活性型変異がmDia1KOマウスにおいても認められ、mDia1はRasの活性化に伴う情報伝達経路の発現に関与し、皮膚腫瘍形成に機能していることを示すものである。このことがケラチノサイト特異的な反応であるか否かを判定するために、mDia1をケラチノサイト特異的に欠失したマウスを作出し、同様なDMBA/TPA処理を開始した。ついでmDia1によるRas情報伝達経路の調節機構を検討するため、培養細胞を用いた解析を行った。Pam細胞(mouse epidermal cell line)をTPAで刺激すると、ERKのリン酸化の亢進が認められる。一方で、RNAi法によりmDia1を枯渇させた細胞ではこのERKのリン酸化亢進が顕著に抑制されていることを見出した。今後、Rasの下流でmDia1により調節を受ける情報伝達経路の分子機序の詳細について検討を進める。 mDiaの機能解析と結合蛋白質の検索 mDia1の結合蛋白質Liprinを見いだし、Liprinが、細胞内でmDiaのアクチン重合活性の抑制に寄与することを見出した。LiprinによるRho-mDiaシグナル伝達経路の阻害は、LiprinによるmDiaの刺激依存的な細胞膜への移行を抑制することによることを見出した。また単分子蛍光偏光によりmDia1の可視化を行い、アクチン線維の螺旋周期構造に一致してその偏光の向きが振動することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、マウス個体を用いた解析を中心に展開するものであり、実験の精度・再現性を得るためには多くの個体が必要とされる。特に、ケラチノサイト組織特異的にmDia1を欠失したマウスを用いる必要が生じ、そのマウスの作出に時間を要した。しかしながら、昨年度末に作出に成功したことから、本年度は計画とおりに研究遂行が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
ケラチノサイト組織特異的にmDia1を欠失したマウスを用い、mDia1欠失によるDMBA/TPA処置によるパピローマ形成抑制がケラチノサイト依存的であることを証明する。加えて、細胞レベルでの解析により、癌化へのRho-mDia1シグナル伝達の役割を分子レベルで解析する。
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