研究概要 |
p53が劣性遺伝性大腸腺腫症の原因遺伝子MUTYHの転写を促進することにより、細胞死の誘起および突然変異蓄積の抑制を介して発がんを抑制する事を明らかにする。 〔平成22年度の研究成果〕 1,MUTYH遺伝子プロモーター領域におけるp53の結合領域同定 p53野生型HCT116細胞におけるクロマチン免疫沈降を用いた解析により、MUTYH遺伝子上に少なくとも2カ所のp53応答配列の候補を同定した。次に、この2つのp53結合領域由来のp53応答配列を持つプロモーター・レーポーター・コンストラクトを作成し、p53欠損H1299細胞あるいは野生型HCT116細胞に導入後ルシフェラーゼアッセイにより機能を検討した。結果、1つの配列がp53応答配列として機能することが明らかになった。 2,p53によるMUTYH依存性細胞死制御機構の解明 p53野生型HCT116細胞を用いて、p53抑制薬剤PFTα存在下あるいはMUTYH-siRNAが酸化ストレス暴露後の細胞死に及ぼす影響を検討した。p53の機能抑制あるいはMUTYHノックダウンはそれぞれ同程度に細胞死を抑制した。しかしPFTα存在下においてMUTYHをノックダウンしても細胞死の抑制効果は増強されず、各々単独の場合と同程度であった。酸化ストレス下においてMUTYHはp53の細胞死制御のメディエータであると考えられる。 3,がん幹細胞における酸化塩基修復酵素OGG1, MUTYHの役割 ある種の大腸がん細胞株においてCD133はがん幹細胞のマーカーとして用いられている(PNAS 2010, 107 : 3722-3727)。p53野生型HCT116細胞株においてCD133陰性と比較しCD133陽性細胞では、ミトコンドリア領域における酸化塩基8-oxoGの蓄積が低くミトコンドリア型hOGG1の発現レベルが高いことを見いだした。
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