研究課題
平成22年度までにSTART-GAP1(DLC1)と接着斑構成因子であるtensin2との結合機構を詳細に解析し、これがtensin2側のPTBドメインおよびSH2ドメインが、START-GAP1の接着斑標的化(FAT)領域のリン酸化を認識する段階的結合反応であることを明らかにした。その際、tensin2とSTART-GAP1は細胞内で完全に共局在化しないことから、別の接着斑因子がSTART-GAP1を接着斑で安定化している可能性が示唆された。平成23年度は、tensin2以外の主要接着斑構成因子である、テーリン、FAK、パキシリン、ビンキュリンとSTART-GAP1との相互作用の有無を、大腸菌発現系を利用したin vitro結合アッセイならびに、動物細胞発現系を利用したプルダウンアッセイによって解析した。その結果、START-GAP1のFAT領域のC端側に存在するLDモチーフと呼ばれる約10のアミノ酸領域を含む460-480領域が、ビンキュリンのC端領域と直接相互作用することを明らかにした。さらに、上皮成長因子(EGF)刺激によるSTART-GAP1の一過性局在化変化とリン酸化状態の変化について、種々のキナーゼ阻害剤を使用してその影響をみたところ、チロシンキナーゼSrcファミリーの阻害剤であるPP2を用いた場合に、局在化の変化も、START-GAP1のリン酸化も見られなくなった。このことから、START-GAP1、はSrcによりリン酸化を受け、局在や機能を調節されている可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度には、当初の研究計画にあった3つの項目のうち、2つを達成できたので。
START-GAP1の細胞接着斑局在化機構に関する解析は、主要接着斑構成因子との相互作用を軸とした分子基盤の解明という視点からは、大筋が理解されたといえよう。すなわち、FAT領域を介したtensin2との相互作用、それを補助する、FAT領域のC端に存在するLDモチーフを含む領域のビンキュリンとの結合がSTART-GAP1の接着斑局在化を保障している。START-GAP2やSTART-GAP3がゴルジ周辺にも局在化することを我々は報告しているが、START-GAPファミリーの細胞内分泌マシナリー上における役割はまだ不明である。これを主要研究項目として平成24年度も続けるかという点は現在再考中である。それよりも、STARTドメインを中心とするSTART-GAP1の構造解析の方が、START-GAPファミリーの機能を理解する上で、より喫緊の課題であると思われるので、現在、START-GAP1の大腸菌発現系を構築し、タンパク質X線結晶解析をめざしている。
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