UTF1と腫瘍性との関連を調べるために、まず腫瘍組織あるいは腫瘍組織より樹立された細胞株について、UTF1の発現の有無を調べることとした。その結果UTF1が発現しているgerm cellに由来したgermcell tumorといったものに、UTF1が発現していることに加え、意外なことに本来UTF1が発現していない組織に由来したneuroblastomaやbreast cancerにおいても、UTF1が発現していることが確認された。なかでもneuroblastomaの場合、cancer stem cellと考えられる細胞において発現していることが確認された。さらにbreast cancer由来の細胞株であるMCF7においてもUTF1の発現を示唆するようなデータが得られ、以上の結果より、UTF1の異所的発現がcancer stem cellの性質維持に重要な寄与をしている可能性が強く示唆された。この結果をもとに、本来はUTF1が発現していない細胞でUTF1が異所的に発現することで、腫瘍性を獲得する可能性について検討するために、UTF1が発現しておらず、また腫瘍性の性質の一つである足場非依存的増殖が出来ないが、不死化はされている、マウス繊維芽細胞由来NIH3T3株に、UTF1を異所的に発現させたような細胞株を樹立した。またこのときポジティブコントロールとして、すでに腫瘍性獲得に関与することが知られているERasを異所的に発現させた細胞株も樹立した。今後はこれらの細胞株を用い(1)増殖速度の変化(2)足場非依存的増殖能(3)SCIDマウスへの接種による腫瘍形成能について調べていく予定である。
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