研究概要 |
細胞内のポリアミン濃度を調節しているタンパク質、アンチザイム(AZ)の発現機構と蛍光タンパク質による可視化技術を融合し、ポリアミンが高値となっているがん細胞を可視化することを目的として研究を行った。具体的には、細胞内のポリアミン濃度が高値となるとAZが翻訳フレームシフト機構によって発現することを利用し、AZのフレームシフト配列を2つの蛍光タンパク質(ECFP,Keima-Red)の間に連結したコンストラクトをプラスミドベクターに組込み培養細胞に導入した。ポリアミンへの感受性の変化を期待し、フレームシフト配列領域を1つ持つコンストラクトとタンデムに連結したコンストラクトを各々作製した。これらは細胞内のポリアミン濃度が低いときにはECFPのみが発現しシアン蛍光が、ポリアミン濃度が高くなるとECFPに加えKeima-Redの赤色蛍光が蛍光顕微鏡下にて観察されることが予想された。これらのコンストラクトを導入した培養細胞に5mMプトレッシンを添加しKeima-Redの蛍光が増強されるか観察した。またオルニチン脱炭酸酵素の阻害剤によりポリアミン濃度を抑えた細胞とインフレームのコンストラクトを導入した細胞の蛍光も観察した。その結果、プトレッシンを添加した細胞ではKeima-Red/ECFPの蛍光強度の増加が観察されたが、非添加細胞と比べ明らかな差が観察なかった。また阻害剤によりポリアミン濃度を抑えた細胞においてもKeima-Redの蛍光のバックグラウンドが観察された。したがって今年度はマウス個体へのコンストラクトの導入することを見送ることとなった。今後フレームシフト配列部分を改良し培養細胞においてポリアミンモニターシステムを確立した上でトランスジェニックマウスの作製に移る予定である。 尚トランスジェニックマウス作成委託費はコンストラクト作成遅れのため使用できなかった。
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