昨年度はアンチザイム1の全ての塩基配列と緑色蛍光タンパク質EGFPのみを使用したコンストラクトを作製した。具体的には、アンチザイム1をN末端にからフレームシフト部位までの配列(シュードノット構造有無の2タイプを作製)とそれ以降に分けてEGFPの配列を挟むように連結した。さらに、抗HA抗体や抗FLAG抗体を用いたイムノブロッティングによるフレームシフトプロダクトの検出が可能なようにHAとFLAGの両タグをN末端に付加した。これらのコンストラクトは細胞内でポリアミンが高値となったとき、EGFPを含むフレームシフトプロダクトが合成され、蛍光顕微鏡により観察された。また、細胞内のフレームシフトプロダクトの発現を抗HA抗体によるイムノブロットによる解析からもポリアミンによる明らかな発現上昇がみられた。 現状において、常に発現しているHAタグが付加したAZ1のORF1領域の発現量と、ポリアミン濃度が高くなったときに発現するHAタグ、FLAGタグ、AZ1およびEGFPの融合タンパク質の蛍光強度の測定により、ある程度のポリアミンの高低を検出することは可能である。しかし当初の計画のように、2つの蛍光タンパク質を用い、蛍光の種類と強度差により細胞内のポリアミン濃度を可視化しおおよそ定量する系を確立するには至っていないため、今年度は2つの蛍光タンパク質(ECFPとKeima-Red)を使用しコンストラクトの改良を試みた。しかし、ポリアミン添加によるフレームシフトがほとんど起こらないため蛍光強度の差が観察されなかった。フレームシフト部位の前に蛍光タンパク質を導入するとフレームシフトがほとんど起こらなくなることが明らかとなった。今後EGFP単一のコンストラクトで計画を進めるか検討中である。 上記の理由により、今年度のトランスジェニックマウスの作成には至らなかった。
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