研究概要 |
本研究者は,皮膚癌における悪性度が最も高いとされている「悪性黒色腫」の治療に有効な分子標的薬の開発を目標としている.これまでに,「悪性黒色腫」の重篤化に関与している1L-10を標的としたIL-10デコイ(IL-10R1の細胞外領域を抗体の不変領域に融合させたタンパク質分子標的薬)を創出し,その物性と機能を評価すると共に,IL-10デコイに関するこれまでの研究成果(Cancer 1mmuno Immunother.(2009)58,1307.,PCT/JP2004/013090,特許第4635255号)を踏まえて.「IL-10活性阻害剤」としての機能に更なる改良を施してきた.具体的には,悪性黒色腫の縮小と免疫賦活効果が確認されているIL-10デコイの機能を保持したまま,発現・精製の簡便性と生体内での安定性を向上させるため,多角体タンパク質にIL-10を融合させた「多角体IL-10デコイ」を新たに創出した.次に,「多角体IL-10デコイ」が有する物理化学的評価(標的タンパク質であるIL-10との結合特異性.結合速度.結合常数等の算出)を生体分子間相互作用解析装置(BIACORE T-100)によって行うと共に,生化学的評価(標的タンパク質である1L-10との結合特異性,結合強度等の算出)をEuSAアッセイ等により検討している-次年度も引き続き,「多角体置IL-10デコイ」が有する物理化学的,生化学的評価を引き続き検討するとともに,IL-10デコイのドラッグデリバリーシステム(DDS)の構築に取り組む.具体的には,IL-10デコイを悪性黒色腫の組織選択的に「送達・集積」させる"非侵襲的同定法"と共に.内包するIL-10デコイの放出を伴った"光線力学温熱療法"を可能とするDDS製剤の開発とその機能評価を行う.IL-10活性阻害剤」としての腫瘍組織の縮小化と免疫賦活効果に関する検討を並行して行う.
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