研究課題/領域番号 |
22501031
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
荒金 尚子 佐賀大学, 医学部, 講師 (20321846)
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研究分担者 |
末岡 栄三朗 佐賀大学, 医学部, 准教授 (00270603)
岩永 健太郎 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (60380755)
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キーワード | 成人T細胞性白血病 / DNA依存性キナーゼ / トポイソメラーゼIIα / DNA二重鎖切断 |
研究概要 |
今年度は、トポイソメラーゼIIα抑制とDNA-PK抑制のdual-inhibitorであるNK314の、成人T細胞性白血病(ATL)細胞株における抗腫瘍効果について検討した。 1. NK314のATL細胞株における細胞増殖抑制効果 IL-2依存性株4株、非依存性株4株を含む8種のATL細胞株についてNK314の細胞増殖抑制効果を検討した。いずれも強い抗腫瘍効果がみられ、IC_<50>は23-71nMであった。一方、正常末梢血単核球に対するIC_<50>は500nM以上であり白血病細胞特異的に抗腫瘍効果がみられた。 2. 細胞周期解析及びアポトーシス誘導 細胞周期の解析では、ATL細胞株8株全てG2/M停止を生じたが、正常末梢血単核球ではその現象は見られなかった。アポトーシスはIL-2非依存性ATL細胞株で見られたが、IL-2依存性ATL細胞株ではその効果は弱かった。 3. NK314によりDNA損傷と修復能の検討 ATL細胞にNK314を処理し、DNA二重鎖切断量をフローサイトメトリーを用いたγH2AX定量により解析した。NK314はエトポシドと比較し、どの細胞株においてもγH2AXは強く誘導され、48時間まで回復しなかった。また、放射線照射により誘導したDNA二重鎖切断は、照射後5分(DNA損傷)、2時間(DNA修復)共にNK314で多くみられた。 4. NK314によるDNA-PK活性抑制機構の解析 全ATL細胞株でDNA-PK複合体は高発現しており、細胞増殖抑制効果とDNA-PK複合体量との相関はなかった。しかし、細胞増殖抑制効果、アポトーシスが強くみられたIL-2非依存性ATL細胞株では、NK314処理後、DNA-PKcsの分解が生じた。 以上の結果より、新規抗癌剤NK314は、ATLに強い抗腫瘍効果を認め、正常細胞には殺細胞効果は見られず、有望な治療薬として期待できる。
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