研究概要 |
1)埼玉医科大学、鳥取大学、岩手医科大学、自治医科大学の4施設により、今年度末までに合計で77症例が本登録となり、当初の目標症例数80をほぼ達成することが出来た。腫瘍/正常組織ならびに末梢血を匿名化番号の付与した容器内にて、埼玉医科大学国際医療センター教員研究棟にある超低温槽で保管している。 2)薬物動態学的解析のため、パクリタキセル投与終了後0,2,8,24時間後のPK採血を行った。順次、パクリタキセル血中濃度の測定を進めている。 3)正常組織/腫瘍組織からtotal RNAを抽出し、Bioanalyzerで泳動後RNAが一定の品質を満たしたものについて、順次オリゴマイクロアレイ解析を進めた。 4)2011年6月までにパクリタキセルの測定値が得られた47症例について、遺伝子多型の決定をし、中間解析を行った。単変量解析においてGSTM1が欠損多型の場合、GSTM1を有している患者に比べ、AUCが有意に高値を示した(p=0.033)。さらに、GSTM1の有無で層別化を行い解析を進めたところ、GSTM1野生型の時、i)ABCB12677G>T/A多型でAアリルを有する患者は有意にMRTが高値を示し(p=0.045)、ii)CYP2C8,CYP3A4,CYP3A5の多型を組み合わせた遺伝子型を有する患者とそれ以外の患者を比較し、AUCとCLで有意な差があることを見いだした(p=0.019,P-0.003)。またGSTM1欠損型の患者で、ABCB1とABCC2の多型を組み合わせた遺伝子型で比較したところ、AUCとC_<max>、で有意な差が認められたが(p=0.036,p=0.0031)、GSTM1野生型ではこのような関係は見いだされなかった。以上のことからパクリタキセルの血中動態において、GSTM1の有無が重要な役割を担っていることが示唆された。
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