研究概要 |
埼玉医科大学、鳥取大学、岩手医科大学、自治医科大学にて、週一回パクリタキセル(TXL)/ 腹腔内カルボプラチン(CBDCA)投与による卵巣癌/腹膜癌治療の第II相試験を行ない、78症例が本登録となった。腫瘍/正常組織ならびに末梢血リンパ球を匿名化番号を付した容器にて、埼玉医科大学国際医療センター内にある-超低温槽で保管した。初回TXL投与時にPK採血を0, 2, 8, 24時間で行い血中TXLの濃度測定を行った。末梢血リンパ球よりDNAを抽出し、これまでに治療奏功性あるいは副作用出現に関連があると報告された遺伝子多型について測定し、PKパラメーターとの相関について検討した。GSTM1が野生型を有している患者では欠損している患者に較べ、有意に血中TXLのAUCが低値を示した (P=0.033)。 GSTM1の遺伝子型で層別化を行ったところ、GSTM1が欠損している症例において、CYP3A5遺伝子のrs776746多型で、Gアレルをホモで有する症例は、それ以外の症例に較べて、Cmaxが有意に低値を示した(P=0.048)。また、GSTM1欠損かつCYP3A5 rs776746多型で少なくとも一本のAアレルを有する症例は、それ以外の症例に較べ有意にCmaxが高値を示した(P=0.025)。副作用出現とこれらの遺伝子多型との関連を見たところ、Grade4の好中球減少と、GSTM1ならびにCYP3A5 rs776746遺伝子多型とは単変量解析で有意な関連を示しており(P=0.036, P=0.040)、多変量解析により、これらはいずれも独立な因子であることが明らかとなった (P=0025, OR=5.11; P=0.005, OR=10.04)。臨床データの追跡調査を続行しており、オリゴマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現との相関をみて、新たな治療効果予測因子の抽出を行う。
|