研究課題/領域番号 |
22501036
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小黒 明広 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (00292508)
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キーワード | 機能性RNA / アプタマー / ポリアミン / がん診断 |
研究概要 |
RNAアプタマーは、ランダムなRNAライブラリーから標的分子との結合を指標に単離するSELEX法により得られる機能性RNAであり、抗体よりはるかに微細な構造の差異を認識できる特徴を持ち、生体内分子の新規検出・解析ツールとして注目されている。ポリアミン量は増殖の盛んな細胞内で増加するため、がんのバイオマーカーとして有用であることが報告されている。がんの診断系の開発を目標に、各種ポリアミンを高感度で識別・検出するツールとしてのアプタマーの有効性を検証するために、まずスペルミンに結合するRNAアプタマーを作製し、解析を行った。 スペルミンを標的にして取得したアプタマーは2つのステムループ構造を持つことが予測され、この構造を基にポリアミン結合部位を調べたところ、3'側のステムループ構造がスペルミンに対して高い親和性を持っていた。このステム構造はACA/Cで形成されるbulge out構造を有しており、このbulge out構造を塩基対合させる変異を導入したところ、アプタマーの結合活性は著しく低下した。また、このbulge outはA/Cの組み合わせにおいて結合活性が高いことが分かった。さらに、このbulge out構造に隣接するA-U塩基対を他の塩基対や対合を作らない組み合わせにすると結合活性が下がった。以上のことからbulge outとこれに隣接するA-U塩基対合が結合に重要であることが分かった。 ジアセチルスペルミンに結合するアプタマーの選択を行なったところ、幾つかのアプタマー候補を得ることができたが、その結合活性はスペルミンアプタマーに比べると低いものだった。他のSELEXの結果と合わせ、選択時のアセチルスペルミンのカップリング方法やRNAライブラリーのプライマーの設定方法に工夫の余地があることが分かった。この結果を踏まえて、新規のアプタマー選択方法をデザインし、次年度でその効果を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スペルミン結合アプタマーを用いたパイロット研究は計画通り順調に進展しているが、ジアセチルスペルミンに強く結合するアプタマーの取得に当初の予定よりも時間が掛かっており、そのため尿サンプルを使った実験への移行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ジアセチルスペルミンに結合するアプタマーの取得方法を改善する。具体的にはRNAライブラリーのプライマー配列の設定、ポリアミンの担体への固定化方法の変更を考えている。前者においてはプライマー同士が塩基対号する形を取ることでランダム配列部分が自由に高次構造を取りやすくなることが今年度までの研究で明らかになってきており、それを採用する。また後者においては、担体とポリアミン間のスペーサー部分を長くして標的へのRNAのアクセシビリティを改善させることで、よりアプタマー取得の可能性が高まると考えている。
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