研究概要 |
今年度は,モデル実験としてシトシンまたはメチルシトシンを1箇所含む20塩基の標的DNAを用い,Taq DNA polymerase(Taq pol)による相補鎖の伸長反応の阻害を指標としたメチル化DNAの識別を試みた.シトシンまたはメチルシトシンを1箇所含む2種類の標的DNAを亜硫酸水素ナトリウムとメトキシアミンで化学修飾した後に,標的DNAに相補的なDNAプライマーを加え,Taq polによるプライマーの伸長反応を行った.その後,変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により,プライマーの伸長を確認した.その結果,亜硫酸水素ナトリウムとメトキシアミンで化学修飾されたシトシンに対合する位置でTaq polによるプライマーの伸長が阻害されることが確認された.一方,メチルシトシンを含む標的DNAでは,伸長の阻害は全く確認されなかった.よって,亜硫酸水素ナトリウムとメトキシアミンで化学修飾した標的DNAにおける,Taq polによるプライマー伸長反応の有無を指標とすることで,メチル基の有無が識別可能であることが示された. 続いて,TWJ構造を形成するプローブDNAを用い,標的DNA中のシトシンのメチル化のピンポイントな検出を試みた.具体的には,両末端にプライマー配列を持ち,中央にシトシン(X=C)またはメチルシトシン(X=M)を含む56塩基の標的DNAを用い,分岐点上にシトシンまたはメチルシトシンが位置するようにTWJ構造を形成させた。TWJ構造を形成させた標的DNAを亜硫酸水素ナトリウムとアミノオキシ化合物で化学修飾した後,標的DNAを鋳型としてプライマー伸長反応を行った.その結果,分岐点がシトシンの場合でのみ,分岐点付近での伸長反応の阻害を確認することができた.また,メチルシトシンでは分岐点を含め,伸長反応の阻害は確認されなかった.すなわち,TWJ構造を形成するプローブDNAを用い,特定のシトシンを選択的に化学修飾することでDNAのメチル化をピンポイントで検出することに成功した.
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