研究概要 |
本研究は、内視鏡検査時に廃棄される胃洗浄廃液からDNAを抽出し、通常内視鏡で診断することの出来ない(可視できない)胃癌内視鏡治療(EMR : Endoscopic Mucosal Resection, ESD : Endoscopic submucosal dissection)後残胃の「微小再発診断」、「再発予測診断」、「リスク群選定」を可能にしようというものであり、今年度までの研究経過および成果は以下のとおりである。我々は、通常内視鏡検査時に破棄される胃洗浄液を回収し、独自に開発した処理工程により遺伝子診断に十分な質と量のDNAを抽出する方法を確立し、特許取得した。また、胃癌発症において高頻度に認めるエピジェネティックな遺伝子異常を高感度かつ網羅的に解析する方法Hyper/HypoMethylated CpG island Amplification icroarray ; H/H-MCAM法亅を用い、「MINT25」および「SOX17」の同定に成功した。 また、この2つの遺伝子メチル化異常はEMR前に回収した胃洗浄廃液に置いて高く、EMR施行後(1週間後)の胃洗浄廃液で著明に低下していることを40症例における検証セット(EMR症例)で確認した。 さらに、興味深いことに、EMR後切除片に対する病理組織診断が垂直断端陽性であった症例において、胃洗浄廃液DNAメチル化異常が治療後にも低下を認めず、その後の追加切除(開腹術)で得られた切除標本内に「癌」の残存が確認できた。 以上の検討から、症例数に限りがあるもののEMR後の遺残診断が胃洗浄廃液を用いた遺伝子メチル化異常でも再現できた成果は大きく、多施設により前向き臨床自主試験を行うべく来年度(平成23年)開始を目標に計画中である。
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