研究概要 |
高悪性度乳癌[トリプルネガティブ型乳癌(ホルモン受容体(HR)陰性かつHER2陰性、TNと略)およびHER2型乳癌(HR陰性かつHER2陽性)]における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)サブセットの治療感受性予測因子としての意義の検討を行った。術前全身療法が行われ、治療終了後外科手術が行われた乳癌患者の中から、TN乳癌例92例、HER2型乳癌42例、と対象の管腔型(1uminal,HR陽性かつHER2陰性)乳癌46例を選択し、これらの治療前コア針生検標本のHE染色病理組織標本を見直し、TILの程度を再評価した。評価法は浸潤面積比率を0(0%),1(≦10%),2(>10~50%),3(>50%)の4段階、浸潤強度を0(なし),1(弱),2(強)の3段階に分け、加算して0~2点をTIL低スコア、3~5点をTIL高スコアと定義した。化学療法の効果は、NSABP B-18における原発巣に関する病理学的完全奏効(pCR)基準、JBCRG01研究におけるほぼpCR(quasi-pCR,QpCR)の基準、原発巣とリンパ節転移巣両方のpCR基準の3つを検討した。TIL高スコアの率は、TN型で73%、HER2型で55%と高率であったが、管腔型では17%にとどまった(P=0.002).TN型においてTIL高スコア群と低スコア群の間でpCR(NSABP B-18基準)の割合は各々37%、16%であり有意差を認めた(P=0.05).また今回検討した180例のなかで、TIL高スコア群と低スコア群の間でpCR(NSABP B-18基準)の割合は各々34%、10%であり有意差を認めた(P=0.0001).また、これらの例において治療前腫瘍組織について免疫組織化学的にCD3,CD8,FOXP3のリンパ球表面マーカーの発現を検討した。各例1000個を目標にTILの数を計測した。CD8,FOXP3単独ではpCRと有意な関連は認められなかった。CD4の染色に疑問が残ったため再染色を行った後、サブセット間の比率と病理学的治療効果判定との関連を調べる予定である。
|