研究概要 |
術前化学療法後、原発巣の切除が行われたTNBC 92例につき、治療前のコア針生検標本の組織学的検査によって、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の程度が強い乳癌は化学療法に対する病理学的完全奏効(pCR)率が有意に高いことを示してきた。TNBCにおいてTIL陰性(スコア0)群でのpCR率は10%(2/20)にとどまったが、TIL軽度(スコア1), 中等度(スコア2), 高度(スコア3)の群では各々34%(13/38), 30%(8/27), 67%(2/3)であった。 TNBCは多彩な癌種から構成されることから、上記の相関が組織型毎に成立つか否かを検討した。TNBCの組織型は優勢構造に基づき充実型(非定型髄様型や壊死を伴う例を含む)42例、硬癌型(中心部無細胞型を含む)33例、化生を伴う癌6例、アポクリン型5例、その他6例に分類した。充実型にてTILスコア0の8例にpCRを認めなかったが、TILスコア1, 2, 3の群では各々50%(7/14), 29%(5/17), 67% (2/3)でpCRがみられた。硬癌型ではTILスコア0の13% (1/8)にpCRを認めたが、スコア1, スコア2の群では30%(6/20), 20%(1/5)の頻度であった。TILとpCRの関連はTNBCの主要な組織型では共通にみられることが示された。一方、化生を伴う癌(扁平上皮癌1、基質産生癌2、紡錘細胞癌3)ではTIL スコア0、スコア2の例でのpCR率は25%(1/4), 0%(0/2)で、他の組織型とは異なりTILとpCRの関連は乏しいことが示唆された。 TILは癌細胞の化学療法反応性の一面を説明し得るが、それだけでは説明しきれないことも多く、今後、ゲノムの修復、間葉系マーカー発現等と免疫機構との組合せによってTNBCの化学療法感受性のマーカーを見出していきたい。
|