研究概要 |
本研究では、最新のプロテオーム技術を用いて癌転移抑制効果を有するmiRNAの標的タンパク質の探索を行った。第一に乳癌細胞の転移を顕著に抑制することが報告されているmicroRNA-31 (miR-31)に着目し、miR-31の標的となるタンパク質の探索とそれら標的タンパク質による癌転移の制御メカニズムの解明を目的としたプロテオーム解析を試みた。転移性乳癌細胞株MDA-MB-231にレンチウイルスベクターを用いてmiR-31を導入し、miR-31導入細胞とコントロールベクター導入細胞から抽出したタンパク質をトリプシン消化後、iTRAQ試薬による標識を行いLC-MS/MSにかけることによりタンパク質の同定と発現量の差異解析を行った。その結果、miR-31導入細胞で発現が変化している複数のタンパク質を新たに同定できた。 次に癌転移を抑制する新たなmiRNAの候補としてmiR-145,miR-205, miR-206,miR-335を選択し、それらmiRNAをレンチウイルスベクターを用いてMDA-MB-231に発現導入した。miR-31を含むそれらのmiRNA発現細胞の癌浸潤抑制効果をマトリゲルを用いたインベージョン・アッセイにより入念に調べた。その結果、それらのmiRNAに浸潤抑制効果は確認できなかった。
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