抗癌剤(5-fluorouracil以下5-Fu)によって引き起こされる消化器系有害事象(主に下痢)について小腸粘膜の病理組織学的、超微形態学的な変化をとらえDAO活性との相関を明らかにし、小腸粘膜障害の指標としてDAO活性の有用性を示し、水溶性食物繊維の投与により小腸粘膜障害の予防ができることを明らかにすることを目的としている。DAO活性測定については試薬の調整などの問題で測定値が不安定であることが指摘されている。重要なのは実験動物個体におけるDAO活性の推移であり、これは同一固体の検体を同時(一度の試薬の調整)に測定することによりこの問題を解決できると考え、実際の測定では、DAO活性測定に実績があり、中国・四国がんプロフェッショナル養成コンソーシアムにおける臨床研究でも測定を依頼している自然免疫応用技研株式会社(高松市)に依頼した。 ラットをコントロール群(抗癌剤未投与群)、5-fluorouracil (5-FU) 投与群、に分け、それぞれ1週間前より水溶性食物繊維投与群と非投与群に分けた。 小腸粘膜の形態学変化を光学顕微鏡で検討した。食物繊維投与群においては非投与群に比べ、小腸絨毛の形態が比較的維持されており、また浮腫も軽度であった。特に、5日目において小腸絨毛の障害程度が軽度であった。走査型電子顕微鏡を用いた検討では、小腸絨毛の舌状構造の破壊の程度が軽度である印象があった。さらに細胞増殖マーカーであるPCNA,Ki67の免疫染色による検討では水溶性食物繊維を投与した群において8日目で小腸絨毛,腸陰窩の再生がより多く認められた。
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