本年度は、二重特異性小型化抗体を作製するために必要な癌特異的に発現しているL-amino acid transporter 1 (LAT1)を認識するモノクローナル抗体(MAb)の作製を中心に研究を進めた。LAT1は12回膜貫通型のトランスポーターであり、申請者は臨床応用を念頭に、ヒト、マウス、ラットのLAT1に共通した細胞外領域を選択し、免疫原の調製を行った。まず、LAT1に特徴的な領域に相当するオリゴペプチドを合成した後、牛血清アルブミン(BSA)と結合させることで免疫原を調製し、これらを免疫原としてマウスに投与した。その結果、高い血中抗体価を得ることができなかったことから、LAT1細胞外ドメインの組換え体を調製し、これを免疫原として抗LAT1 MAbの作製を行うこととした。LAT1細胞外ドメイン遺伝子の情報を基にプライマーを合成し、HeLa細胞由来cDNAライブラリーを鋳型として常法によりPCRを行い目的とする遺伝子を増幅した。増幅した遺伝子の配列を確認した後、大腸菌を宿主とした発現に用いるベクターpColdIに組み込み、コンストラクトを構築した。本コンストラクトを用い、BL21 (DE3)を形質転換した後、発現誘導を行った結果、目的とするLAT1細胞外ドメインの発現に成功した。続いて、発現したタンパクを精製し、これを免疫原としてマウスを免疫感作することで、抗LAT1抗体の作出を試みた。その結果、LAT1を認識する抗体の産生を確認することができた。次に、常法により細胞融合を行うことで抗LAT1 MAbの作製を行ったところ、LAT1を認識するMAbを数種得ることができた。今後は、得られたanti-LAT1 MAb産生ハイブリドーマを材料として抗LAT1小型化抗体を作製し、さらに既に作製している抗パクリタキセル小型化抗体と連結することで、二重特異性小型化抗体を作出する計画である。
|