研究課題/領域番号 |
22501046
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 宏幸 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (30253470)
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キーワード | パクリタキセル / 小型化抗体 / L-amino acid transporter I (LAT1) / 癌 / ミサイル療法 / 二重特異性抗体 |
研究概要 |
本年度は、二重特異性小型化抗体を作製するために必要な癌特異的に発現しているl-aminoacid transporter 1 (LAT1)を認識する組換え抗体の作製を中心に研究を進めた。組換え抗体としては、先ず、安定性の高いantigen binding fragment (Fab)に着目した。昨年度作製した抗LATiモノクローナル抗体(MAb)産生ハイブリドーマを材料として、常法によりmRNAの抽出、cDNAの合成を行った後、VH-CH1, VL-CL遺伝子を増幅し、続いて増幅した遺伝子の配列を確認した結果、complementarity determining region (CDR)を含み、期待した配列を有することを確認した。次に、発現用ベクターpET28a(+)に組み込み、コンストラクトを構築した。組換えFabの発現には、大腸菌Ecoli BL21 (DE3)を用いて、本株を確立したコンストラクトを用いて形質転換した。形質転換体を大量培養した後、IPTCによる発現を試みた結果、両フラグメントは不溶性画分に発現していることが確認できた。発現した両フラグメントを用いて、透析法によるFabの再生を実施し、さらに抗原による反応性をELISAにより確認した結果、作製した組換えFabが抗原であるLAT1を認識することを確認することができた。 また、本年度は市販のHer2抗体産生ハイブリドーマを材料として抗Her2小型化抗体遺伝子を構築した。更に、抗Her2小型化抗体と抗パクリキセル小型化抗遺伝子を連結した二重特異性抗体の構築にも成功した。 以上のように、本研究課題を遂行するための重要な癌細胞特異的送達ツールの構築に成功することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
困難が予想された抗LAT1モノクローナル抗体の作製にも成功し、さらに、平成23年度以降に実施する計画を立てていた癌細胞特異的送達ツールである二重特異性小型化抗体を構築することができたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
既に、本研究課題の最終年度である来年度は、抗LAT1小型化抗体と抗パクリタキセル小型化抗体を連結した二重特異性小型化抗体と既に作製している二重特異性小型化抗体のインビトロ、インビボでの評価が中心となる。各種癌細胞を用いたインビボでの評価は、細胞毒性指標に一般的なアッセイを計画している。さらに、インビボでの評価は癌細胞を移植したマウスを用いた手法を応用するが、動物実験講習会などを活用して技術の習得に努める計画である。
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