研究概要 |
癌撲滅は発症前診断と速やかな癌細胞・組織の除去により可能である。癌発症の基点は病変内血管新生であり、それ以前ならば内視鏡下にて除去可能である。 本研究では、発症前の癌診断と内視鏡による予防的治療の推進による癌撲滅の実際と、実際に発症してしまった段階の癌治療のための新薬開発を目指した。その梃子の視点となる物質基盤が申請者らにより発見され、特許取得済の癌細胞特異的産生物質、ブラディオン(Septin4 GTPase)である。 現在まで国の事業として試行・推進された抗癌剤候補(例;ストレプトミセス属の産生する新規物質)を検定したが、有効となる物質は皆無であった。そのほとんどは抗癌剤としての実質効果が認められず、正常細胞毒性が強いため、実地に使用できる範囲の検定も不可能であった。 さらなる候補物質を探査すると共に、実質的に癌撲滅に直結する発症前診断技術の収斂と医療応用を実践した結果、現在まで653例の検定を行い、陽性率は24.7%であった。陽性者は大腸内視鏡による癌予防治療を受け、その内容は早期大腸癌1例、直腸カルチノイド、大腸腺腫、大腸ポリープの段階であり、特に憩室を伴う場合が多い。これは早期ポリープ除去(大腸洗浄含む)が大腸癌発症予防、23年の延命効果があると報告された内容に合致している(Zauber, 2012)。 これらの結果を報告したZurichでの招待講演が端緒となり、米国Thermo Fisher Scientific Inc.の新規微量測定技術Mass Spectrometric Immunoassayを応用した世界標準としての血液検査システムの開発が開始され、予備実験で有望なデータが得られている。さらに膀胱癌を用いたブラディオンの診断能の有用性 (Tanaka, 2003) が追試され、世界的にもその早期診断能が確認された(Bongiovanni, 2012)。
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