テロメレースはテロメア伸長作用の他に、抗癌剤の耐性機構に関与することを見出し、テロメレース活性の誘導にSTAT5が関与していることを報告した。ABCトランスポーターに属するP糖蛋白のMDR1はATP依存性に細胞内から細胞外へ異物を汲み出すポンプであり、化学療法抵抗性の白血病細胞ではP糖蛋白の発現亢進があることが報告されている。今回科学研究費の支援により、P糖蛋白(Pgp)が強発現している白血病細胞ではテロメレース蛋白の発現増加も見られ、いずれも転写因子STAT5が関与していることを見出し報告した(Activation of STAT5 confers imatinib resistance on leukemic cells through the transcription of hTERT and MDR-1. Cellular Signalling in press)。すなわちP糖蛋白発現とテロメレース蛋白発現の増強がSTAT5を介して薬剤耐性に関与する可能性が考えられる。マイクロRNA(miRNA)はメッセンジャーRNAの翻訳制御に働き、細胞増殖、アポトーシスの調節に関わっている。薬剤耐性獲得前後の白血病細胞株を用い、miRNAのマイクロアレイを行い、テロメレースに的を絞った機能解析を行った。この結果やメチレーション解析の結果等を基にして、癌幹細胞を標的とした新たな薬剤耐性克服の治療戦略を開発することを目指している。白血病幹細胞の性質を持ったK562細胞で薬剤耐性獲得前後の細胞を利用し、免疫ビーズ法でCD34陽性、CD38陰性細胞の白血病幹細胞を濃縮して使用した。AGPC法で全RNAを抽出後2分し、半分はcDNAアレイ用に保存し残りをスモールRNA特異的抽出キット(Ambion社flashPAGEシステム)で40nts以下の成熟miRNAを抽出した。遺伝子発現の調節機序の一つとしてエピゲノムによる調節が考えられる。薬剤耐性獲得前後の白血病幹細胞の遺伝子メチレーションの違いをアレイ解析により、テロメレース遺伝子、MDR1遺伝子を含めて網羅的な解析を行った。
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