研究概要 |
科学研究費の支援により、P糖蛋白(Pgp)が強発現している白血病細胞ではテロメレース蛋白の発現増加も見られ、いずれも転写因子STAT5が関与していることを見出し報告した(Activation of STAT5 confers imatinib resistance on leukemic cells through the transcription of hTERT and MDR-1. Cellular Signalling,23:1119-1127,2011)。すなわちP糖蛋白発現とテロメレース蛋白発現の増強がSTAT5を介して薬剤耐性に関与する可能性が考えられる。miRNAのマイクロアレイを行い、テロメレースに的を絞った機能解析を目的としたが、その結果やメチレーション解析の結果等を基にして、癌幹細胞を標的とした新たな薬剤耐性克服の治療戦略を開発することを目指している。予備実験として白血病幹細胞の性質を持ったK562細胞で薬剤耐性獲得前後の細胞を使用した。薬剤耐性獲得前後のプロモーター領域のメチレーションの違いをメチレーション特異的抗体でクロマチン免疫沈降後アレイ解析を行った。この結果、STAT5, HSP90のプロモーターの低メチル化が顕著であった。これは我々が既に報告したSTAT5,HSP90蛋白の発現増強の結果を裏付けるものであった(Cellular Signalling,23:1119-1127,2011)。テロメレース遺伝子(hTERT)、MDR1遺伝子のプロモーターのメチル化は薬剤耐性獲得前後で特に変化はないことから、STAT5の活性化によるhTERT, MDR1の蛋白発現増強が起こっていることが示唆された。
|