研究概要 |
【研究の目的】乳癌罹患リスクモデルの構築は,検診と予防の観点から重要な臨床課題であるが,日本人女性を対象とした確立したリスクモデルはない.近年の遺伝子研究の結果,特定領域の遺伝子多型が乳癌の発症リスクに関連することが報告されている.遺伝子多型には人種差が存在するため,日本人女性における遺伝子多型と乳癌リスクとの関連を独自に検証する必要がある.本研究では,従来の乳癌リスク因子を詳細に調査するとともに,エストロゲン代謝,エストロゲン受容体,IGF(Insulin Like Growth Factor)の遺伝子領域における遺伝子多型の乳癌リスクとしての因子解析を行い,より包括的かつ近代的な日本人乳癌リスクモデルの構築を目的とする. 【研究実施計画】現在,乳癌罹患リスクモデルの構築における重要な課題は,これまでに明らかになっているリスク因子に加え,遺伝子の多型性をリスク因子としてモデル加えるにとに意義があるか否かの検証である.また,乳癌リスク因子と乳腺濃度との関連,乳腺濃度の乳癌罹患リスクの予測因子としての意義の検証することは,乳癌検診や予防方法の研究に直結する重要な研究課題である.我々はこれらを明らかにするため,研究期間内に以下の研究を計画した.研究1.生活や食習慣が乳腺濃度や浮癌罹患リスクに及ぼす影響に関する検討(ケース・コントロール研究):これまで行った乳腺濃度に関する研究範囲を拡大し,ケース(乳癌症例)とコントロール(検診症例)を対象として,生活歴や生活習慣に関する詳細な調査と,マンモグラフィ濃度の測定を行い,乳癌リスク因子と乳腺濃度との関連性,乳腺濃度の乳癌罹患リスクの予測因子としての意義を明らかにする.研究2.エストロゲン合成酵素および受容体における遺伝子多型と乳腺濃度・乳癌罹患リスクとの関連性に関する検討(ケース・コントロール研究):研究1において,対象者の同意のもとに血液サンプルの採取を行う.これまでに,乳癌罹患リスクに関連すると報告の多い,エストロゲン合成酵素,エストロゲン受容体,IGF産生経路の遺伝子領域を標的としてSNP解析を実施する.各領域の遺伝子多型が,乳癌リスクに及ぼす寄与度を数値化し,特定領域の遺伝子多型を乳癌リスクモデルに組み込むことの有用性と妥当性について検証する. 【研究の進捗】上記研究遂行のため「日本人女性の乳がん発症リスクに関する症例対照研究」実施計画書を作成.同研究計画は平成22年8月31日に開催された岡山大学大学院医歯薬学総合研究科ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会にて承認された.以後,研究協力機関(香川県立がん検診センター,香川県立央病院,水島協同病院)とともに症例集積を開始した.平成23年2月22日現在,ケース120例,コントロール200例(予定症例数1000例のうち32%)の症例集積を完了した。収集調査票の電子化,収集血液サンプルのDNA抽出,画像解析ソフトを用いたマンモグラフィ濃度の測定を並行して実施中である.現ペースの持続により,今夏には予定症例数に達する見込みであり,平成24年3月を最終解析の目標期日としている
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