本研究課題では、腎癌患者において術前末梢血中のガンマ・デルタ型T細胞数及びT細胞中に占める割合が予後にどのように影響するかを検証する臨床研究である。まず申請者が平成8年12月から9ヶ月間において行った結果との整合性を確認するため、まず当院にて手術を行った腎癌患者の術前末梢血中に占めるγδ型T細胞及びその他のリンパ球サブセットの細胞数、割合を検討した。リンパ球サブセットは一般血液検査の白血球分画に準じるものであり、既存の同意説明文書及び同意書を用いた。個人情報およびデータは、新規購入したPCにデータベースを構築し、安全に保管している。平成22年9月までに114症例の腎癌に対する手術を行い、術前の末梢血の解析を行った。114症例の術前病期は、I期:92人、II期:3人、III期:8人、IV期:11人であった。114症例の内、術前に末梢血のγδ型T細胞のT細胞に占める割合が10%以上と増えていた症例が7人おり、5人(5.5%)がI期、2人(16.7%)がIV期の症例であった。逆にγδ型T細胞の割合が2%未満に減少している症例が56人おり、7人(58.3%)がIII期、2人(66.7%)がII期、47人(51.1%)であった。経過中に転移・再発を認めた症例が3人おり、1人が術前のγδ型T細胞の割合が5.94%であったが、2人は1.0%および1.6%であった。術前にγδ型T細胞の割合が10%以上増えていた7人では、術前病期IVの1症例でリンパ節の局所再発を認めた。近年検診エコー等で早期に発見される腎癌が増えており、114症例のうち81%がI期であった。術前病期の偏りから、局所浸潤腎癌が8人と少なく、既存の研究とは異なる結果になった。しかし、早期再発を来した3症例では、2症例でγδ型T細胞の割合が少なく、再発のリスクファクターになる可能性も示唆された。
|