研究課題
本研究課題では、腎癌患者において術前末梢血中のガンマ・デルタ型T細胞数及びT細胞中に占める割合が予後にどのように影響するかを検証する臨床研究である。平成23年4月1日までに腎癌の診断で192症例の手術が施行された。このうち良性腫瘍或いは転移切除が施行された22症例を除く170症例を対象とした。平成24年3月23日までフォローされた症例のうち、10人が癌死した。癌死症例の術前末梢血γδ型T細胞の割合は平均1.6%(SD=1.5%)であった。また、今年度観察期間に新たに転移・再発を来した症例が9症例あり、術前の末梢血γδ型T細胞の割合は平均3.0%(SD=4.3%)であった。また、現時点で転移・再発を認めない症例の術前末梢血γδ型T細胞の割合は平均2.9%(SD=3.7%)であった。癌死症例では、明らかに術前の末梢血γδ型T細胞の割合が低かった。新たに転移・再発を認めた症例と認めない症例では、差は認めないが術後観察期間が1年未満の症例もおり、引き続き経過フォローが必要である。γδ型T細胞の減少が、予後不良因子となる可能性が示唆されるため、末梢血γδ型T細胞が増加している症例と増加していない症例の抗原に対する反応性に違いを検討した。抗原刺激に対する増殖反応は、両症例とも差は認められなかった。しかし、培養系において予め接着細胞を除くと、二次刺激における増殖維持が低下した。このことから、癌患者に於いてγδ型T細胞の減少している症例では、活性化したγδ型T細胞の維持に関わる細胞の存在が示唆された。このメカニズムが末梢血γδ型T細胞の減少している症例の予後不良原因と推測された。
2: おおむね順調に進展している
腎癌の診断で手術の施行された192症例のデータベース化と術後フォローができている。予後因子となる可能性のあるγδ型T細胞減少のメカニズムの解明が進んでいる。
腎癌術後のフォロー期間が1年未満の症例がおり、引き続き転移・再発の有無を定期的にフォローする。当初術前のγδ型T細胞の増殖が、予後良好な因子となると予想していたが、192症例では増加した症例が7症例と少なく検討がやや困難である。今年度の検討では、術前のγδ型T細胞の減少が予後不良因子となる可能性が示唆され、引き続きフォローする。γδ型T細胞減少の原因となることが予想される接着細胞の同定を勧め、メカニズムを明らかにする。メカニズムの解明から、予後不良症例の予後改善に繋がると考えられる。
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