腎細胞癌(腎癌)は、転移巣の自然消退や、術後20年以上の晩期再発等の報告や免疫療法が有効なことから、その進展・再発には、宿主の免疫能が大きく関わっていると考えられている。しかし、どのような免疫担当細胞が関与しているのかについて未だ明らかになっていない。私たちは既に術前のγδ型T細胞数と割合が進行腎癌の予後に相関することを報告しており、またγδ型T細胞を用いた免疫療法の有用性について報告している。そこで術前の末梢血中γδ型T細胞数等の転移・再発への関与について検討した。 本研究は、東京女子医大病院泌尿器科にて2009年9月から2011年4月までの期間で、腎癌の診断で手術を施行した188症例のうち、病理学的に腎癌と診断された146症例について、術前の末梢血中のリンパ球サブセット、病理学的検査、及び血液・生化学的検査を検討することで、術後再発リスクの高い症例の新規マーカー探索及び宿主の免疫監視に関わる免疫担当細胞の探索が目的である。 手術時に転移を認めた12症例を除いた134症例のうち、2015年3月31日時点で、20症例に再発を認めた。術後再発までの平均期間は、33.5ヶ月+21.6ヶ月であった。146症例について年齢、性別、血液・生化学的検査(血清アルブミン、ヘモグロビン値、LDH、CRP)、免疫担当細胞数(末梢血白血球数、CD3陽性細胞数、CD4陽性T細胞数、CD8陽性細胞数、γδ型T細胞数)及び白血球分画(好中球%、CD3陽性細胞%、CD4陽性T細胞%、CD8陽性細胞%、γδ型T細胞%)、腫瘍サイズ(cm)およびT分類、病期、組織型、グレードについて、再発までの期間、生存期間との関係を解析した。早期腎癌(ステージI、II)において、末梢血中γδ型T細胞数が術後再発に有意(p=0.0283)に相関し、γδ型T細胞数が6個/μL以下の場合、再発をきたすリスク比が1.06となった。
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