フルボ酸鉄による沿岸性植物プランクトン鉄摂取増殖機構

2012 年度 研究成果報告書

• 研究課題/領域番号: 22510001
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 一般
• 研究分野: 環境動態解析
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 久万 健志 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 教授 (30205158)
• 研究期間 (年度): 2010 – 2012
• キーワード: 海洋生物地球化学 / 沿岸性植物プランクトン / 基礎生産 / フルボ酸鉄 / 鉄摂取

研究概要

溶存有機物が多く含む河川水中の各鉄化学種濃度は高く、特にフミン物質蛍光強度と真の溶存鉄濃度との関係が見られ、河川水中のフルボ酸が3価鉄と溶存有機錯体鉄を形成していることが明らかになった。また、河川起源溶存フルボ酸鉄錯体は海水と混合しても比較的安定に存在していることを示し、河口域から沿岸域への溶存鉄を運ぶ重要な役割を果たしている。フルボ酸鉄錯体を多く含む河川由来溶存鉄を添加した沿岸性植物プランクトン-栄養塩培地では、細胞密度及びクロロフィルa濃度が急激に増加した。これは、河川水中のフルボ酸鉄錯体が海水と混合すると、フルボ酸鉄錯体から生物利用可能な溶存無機3価鉄イオンが徐々に解離し、それが植物プランクトンに摂取されたためと考えられ、河川の影響ある沿岸域の高い基礎生産を維持していると考えられる。

研究成果

• [雑誌論文] Iron, nutrients and humic-type FDOM in the northern Bering Sea Shelf, Bering Strait and Chukchi Sea. (2012)
  • 著者名/発表者名: Nishimura, S., K. Kuma, S. Ishikawa, A. Omata and S. Saitoh.
  • 雑誌名: J. Geophys. Res. 巻: 117 ページ: C02025
  • DOI: doi:10.1029/2011JC007355
  • 査読あり
• [雑誌論文] 北東部ベーリング海大陸棚域及び西部北極海における鉄の挙動とその起源。 (2012)
  • 著者名/発表者名: 久万健志、中山雄太、藤田聡志、西村将太郎、石川聡子、小俣紋、島田浩二.
  • 雑誌名: 総特集生物地球化学過程に果たす環オホーツク圏の海洋循環・物質循環の役割-III:9月号。月刊海洋 巻: Vol.44,No.9 ページ: 531-540
• [雑誌論文] Effects of Mn and Fe on the growth of a coastal marine diatom Talassiosira weissflogii in the presence of precipitated Fe(III) hydroxide and EDTA-Fe(III) complex. (2012)
  • 著者名/発表者名: Ushizaka, S., K. Kuma and K. Suzuki.
  • 雑誌名: Fish. Sci. 巻: 77 ページ: 411-424
  • DOI: doi:10.1007/s12562-011-0339-6
  • 査読あり
• [雑誌論文] Importance of intracellular Fe pools on growth of marine diatoms by using unialgal cultures and the Oyashio Region phytoplankton community during spring. (2011)
  • 著者名/発表者名: Sugie, K., K. Kuma, S. Fujita, S. Ushizaka, K. Suzuki and T. Ikeda.
  • 雑誌名: J. Oceanogr. 巻: 67 ページ: 183-196
  • DOI: doi:10.1007/s10872-011-0017-4
  • 査読あり
• [雑誌論文] 外洋中深層における鉄分布を決定する化学的要因:3価鉄溶解度と海洋性フミン物質。 (2011)
  • 著者名/発表者名: 久万健志、磯田豊.
  • 雑誌名: 総特集潮汐混合とオホーツク海・ベーリング海の物理・化学・生物過程-白鳳丸KH09-4航海・おしょろ丸・クロモフ2006/2007シンセシス-。月刊海洋 巻: Vol.43,No.11 ページ: 718-728
• [学会発表] 鉄の化学形態(2価、3価、河川起源)の違いによる沿岸性珪藻の増殖。 (2013)
  • 著者名/発表者名: 三浦大地、久万健志
  • 学会等名: 日本海洋学会春季大会
  • 発表場所: 東京海洋大学品川キャンパス(東京)
  • 年月日: 2013-03-24
• [学会発表] 函館湾流入河川の鉄の化学形態・輸送におけるフミン物質の役割。 (2013)
  • 著者名/発表者名: 森田雄一朗、久万健志
  • 学会等名: 日本海洋学会春季大会
  • 発表場所: 東京海洋大学品川キャンパス(東京)
  • 年月日: 2013-03-24
• [学会発表] 噴火湾海盆域底層における栄養塩と鉄の挙動とその起源。 (2013)
  • 著者名/発表者名: 日置菜々子、久万健志、大木淳之、大西広二
  • 学会等名: 日本海洋学会春季大会
  • 発表場所: 東京海洋大学品川キャンパス(東京)
  • 年月日: 2013-03-24
• [学会発表] 鉄・微量金属・栄養塩環境と低次生態系--シンポジウム急激な海氷減少と北極海海洋生態系の変化 (2012)
  • 著者名/発表者名: 久万健志.
  • 学会等名: 平成24年度日本海洋学会春季大会講演要旨集
  • 発表場所: 筑波大学(茨城)
  • 年月日: 2012-03-30
• [学会発表] Iron and humic-type fluorescent dissolved organic matter inthe western Arctic Ocean. Nutrients, biogeochemistry and acidification in a changing climate (S4/S9 Session). Comparative Studies of Climate Effects on Polar and Sub-Polar Ecosystems. (2011)
  • 著者名/発表者名: Kuma, K., Y. Nakayama, S. Fujita, and K. Shimada.
  • 学会等名: 2nd Ecosystem Studies of Sub-Arctic Seas (ESSAS) Open Science Meeting
  • 発表場所: Marriot waterfront Hotel, Seattle, WA, USA.
  • 年月日: 2011-05-23
• [学会発表] 河川起源の鉄による沿岸性珪藻の増殖機構。 (2011)
  • 著者名/発表者名: 藤村謙一、久万健志
  • 学会等名: 日本海洋学会春季大会
  • 発表場所: 東京大学柏キャンパス(千葉県柏)
  • 年月日: 2011-03-23
• [学会発表] マンガン存在下における植物プランクトンの鉄摂取増殖機構。 (2011)
  • 著者名/発表者名: 牛坂理美、久万健志
  • 学会等名: 日本海洋学会春季大会
  • 発表場所: 東京大学柏キャンパス(千葉県柏)
  • 年月日: 2011-03-23
• [学会発表] 西部北極海(チュクチ海、カナダ海盆)における鉄の挙動。 (2011)
  • 著者名/発表者名: 久万健志、中山雄太、藤田聡志、島田浩二
  • 学会等名: 日本海洋学会春季大会
  • 発表場所: 東京大学柏キャンパス(千葉県柏)
  • 年月日: 2011-03-23