本研究は,鳥海山からの地下水が伏流水として湧出している日本海沿岸海域を対象とし,異なる種類のセンサで取得されたリモートセンシングデータを組み合わせて複合的な解析を行い,対象地域における海底地下水の湧出メカニズムを明らかにするための検討を行った。具体的には,人工衛星だいちにより取得されたAVNIR-2データおよびPALSARデータを用いてISO DATAによる分類を行い,その結果を用いて解析を行った。また,現地調査結果・専門家の知見・地質の形成時期に着目した検討結果に基づき,リモートセンシングデータと地下水湧出地点における各種パラメータの関連について検討を行った。さらに,海水表面情報などの季節的変化の解析を行った。得られた成果を以下にまとめる。 ・秋季(10月)および冬季(1月)に取得されたPALSARデータを用い,テクスチャを特徴量として得られた分類結果は,専門家による知見や現地調査により得られた海底地下水湧出地点と一致し,対象地域における海底地下水湧出地点の特徴解析に有用であることを明らかにした。 ・冬季における海底地下水湧出地点の特徴解析には,AVNIR-2データよりもPALSARデータの方が利用できる可能性のあることを明らかにした。 ・湧出地点に一致すると考えられるクラスタのサイズは,冬季に取得されたデータの方が秋季に取得されたデータよりも小さくなる傾向を認めた。これは,(1)冬季における海水と地下水の水温差が小さいこと,並びに(2)冬季における地下水の湧出量は少なくなることに起因する可能性のあることを明らかにした。 ・水温の相違など局所的な海水表面情報の相違により,海底地下水の湧出地点と認識されている地点においても,共通の特徴が抽出される地点,異なる特徴の抽出される地点がそれぞれ存在することを明らかにした。
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