富山湾を中心とした大気の鉛直方向、すなわち高低差3000m、空間方向、すなわち水平方向100kmの観測領域から、大気汚染物質の季節変化とその動態解明の研究を行った。本研究期間において、富山(富山市:富山大学五福キャンパス)、立山・浄土山(標高2839m:富山大学立山施設)、珠洲(珠洲市:能登半島里山里海自然学校)の3カ所におけるスカイラジオメーターを使った太陽放射観測から、エアロゾルの光学的特性の解析を行った。その観測結果より越境大気汚染とローカルな大気汚染の輸送過程を検証を行った。エアロゾルの光学的厚さの月平均値は、概ね、富山と珠洲では、春から初夏に高く、秋に低い同じような季節傾向が見られた。月平均値レベルで検証してみると、この水平方向100kmの観測領域では、同じような変動を示していたことが確認された。しかしながら、細かく特徴を調べてみると、ローカルな影響も含まれていることが確認された。立山での観測は、観測を本格的に出来るようになったが、自然環境の厳しさと、山頂付近が天候不順だったため、太陽光の観測があまり出来なかっが、いくつかのデータは取得できた。また、冬期間の観測領域内の季節変化や大気汚染物質の動態解析を補うため、立山・室堂平における積雪断面調査を行い、季節変化とその動態解明の基礎データベースを作成した。さらに、スカイラジオメーター観測データのみならず、数値モデルとの比較も行い、今後の研究の基礎となるデータを得ることができ、国際学会などで報告することができた。これらの結果を踏まえ、月平均値では同じ傾向にあったが、モデルと違う傾向もいくつかあったので、今後の研究の課題としたい。
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