研究実績の概要 |
熱帯降雨観測衛星TRMMにはマイクロ波帯を使う降雨レーダPRが初めて搭載され、直接降水を観測することにより、精度の高い24時間毎の降水特性の空間分布を導出することが可能となった。1997年11月に打ち上げられ2015年4月に観測を終えるまでの長期データが蓄積されたので、TRMM観測領域全域における降水システムの気象学的特徴の長期変動(トレンド)の地域特性を詳細に捉えることができた。 TRMM衛星V6とV7の全データの蓄積と初期解析についてはほぼ完了し、15年分の統計解析を行った。初期解析として、幾つかのパラメータについて扱いやすい0.05度×0.05度のグリッド化したPRデータを陸上・海上・海岸上、対流性と層状性に分けて各地方時刻毎に月毎に作成するという目標は達成した。作成したパラメータは、観測回数、地表面付近の降水の観測回数とその降水量、X mm/hr以上の降水を観測した回数とその降水量(X=3,20)、降雨頂高度、ブライトバンド高度である。作成した長期グリッドデータから、降水量、降水強度、強い降水、弱い降水、対流性降水と層状性降水の割合などの変動の地域特性を調べた。 また、2012年までの15年分の地表面射出率データセットを作成し、TRMMグローバルな地表面のトレンドの地域特性を詳細に捉えることができた。降水システムのトレンドも加味し、地表面状態の変化と降水特性の変化の関係(相互作用)を調査し、国際学会で発表し、結果をまとめ国際雑誌に投稿した。また、このデータ作成にはJRA25/JCDASのデータを使用していたが、2014年2月で配布終了となりJRA55に変わったので、2014年2月に打ち上げられた全球降水観測計画衛星GPMデータからの地表面射出率データセットはJRA55を使用して作成した。これはGPMや全球降水マップGSMaPの降水推定アルゴリズムの改善に寄与する。
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