本年度は以下の解析を行った。 1.淡水湖の細菌群集構造解析 ラングボブデのぬるめ池、スカルブスネスの地蔵池、菩薩池、如来池、仏池、親子池、孫池の細菌群集構造解析を行った。データベース解析からはすべての淡水湖においてThiomicrospira sp.が優占属となり全クローンの48-86%を占めていた。Thiomicrospira sp.は北極や南極の海洋とアメリカのマクナード基地周辺の滝に生息する。一方、塩湖にも出現したMarinospirillum sp.などの菌属も数は少ないながら共通に出現した。この結果は海水由来の細菌属が淡水に変化した後でも生息し続けていることが示唆された。しかしながら、その出現頻度は低く、Thiomicrospira sp.が優占する単純な細菌群集構造を形成していた。淡水湖と塩湖には過剰に酸素が存在することから、これらの細菌群集構造の違いは塩分濃度の違いが原因であることが考えられた。 2.塩湖と淡水湖に出現する細菌属の系統解析 淡水湖と塩湖に出現する細菌属の塩基配列を用いて両池に出現する細菌の系統の違いを調べた。淡水湖のみに出現したThiomicrospira sp.は塩湖と淡水湖に共通に出現するMarinospirillum sp.やMarinobacter sp.に近縁であった。また、塩湖にのみ出現した細菌属はそれ自身を含む単独のクレードに分類され、しかも未培養クローンとして登録されているものが大半であった。このことはこれらの細菌が現在までに培養分離されていない細菌種であるか、もしくは氷河期後に大陸が上昇し取り残された細菌がそのまま南極湖沼において生き続けてきた古い細菌種である可能性も考えられた。 今後は2012年4月に共同研究者から送付される試料を解析し、新奇の培養可能細菌を分離する予定である。これらが単離培養できれば、新奇細菌であることが予想される。
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