研究概要 |
火山周辺地域の地下部に広く分布し,テフラ(火山砕屑物)の堆積によって埋没した土壌,埋没土壌の炭素貯留量と埋没作用が土壌の性状に与える影響を解明するため,本年度は以下のように研究を進めた.まず九州南部の宮崎県都城市周辺,宮崎県田野町,大隅半島の鹿児島県錦江町において,主に野外調査とそれら試料の採取を行った.都城盆地では,約4,600年前に霧島火山群御池から噴火した御池テフラ直下と,約7,300年前に鬼界カルデラ(現薩摩硫黄島付近)から噴火した鬼界アカホヤテフラ直下で,特に高含量の炭素貯留層(埋没腐植層)の分布を改めて確認した.これらの埋没腐植層はシラス台地上の地表下1m以深に分布する.また,同地域では,霧島火山群新燃岳から2011年1月に噴火した新鮮なテフラ試料も得た.次年度に,都城盆地における1m以深の埋没腐植層のデータと既存のデータから,GIS(地理情報システム)によって,埋没土壌の炭素貯留量とその分布を評価する.これまでの土壌の炭素貯留量における評価は,深さ1mまでであり,新たな知見の提供が期待できる.宮崎県田野町の宮崎大学附属演習林では,植物試料として,広葉樹林下の落葉と,メダケ,ススキを地上部,地下部に区分して採取した.この植物試料と前述の新燃岳起源のテフラ試料を用い,室内実験から初期の土壌生成過程について検討する.大隅半島の鹿児島県錦江町では,前述の鬼界アカホヤテフラと約6,400年前に開聞火山群池田湖から噴火した池田湖テフラに挟在する約900年間の中で生成した炭素含量が高い埋没土壌試料を採取した.採取した埋没土壌の炭素・窒素含量,植物珪酸体分析,放射性炭素年代測定などの分析を実施予定である.初期の土壌生成過程や約900年間で埋没した土壌の解析から,埋没作用が土壌の性状に与える影響の解明が期待できる.
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