本年度は,特に埋没作用が土壌の性状に与える影響の解明について検討し,併せて補足的に埋没土壌の分布調査を行った. これまでに明らかにした地表から1 m以深の埋没土壌の炭素貯留量が,深さ1 m以内の炭素貯留量の約1.5倍を有する宮崎県都城盆地の約4 mのテフラ―土壌シークエンスから,約5 cmずつ連続して採取した69点の試料を用い,酸性シュウ酸塩可溶アルミニウム(Alox),ケイ素(Siox),鉄(Feox)含量およびピロリン酸塩可溶アルミニウム(Alpy),ケイ素(Sipy),鉄(Fepy)含量を調べた.その結果,Alpyが最も有機炭素含量との相関が高く,テフラの堆積などによる埋没後も数千年あるいは数万年間に渡って,土壌炭素の多くがAl-腐植複合体として,土壌中に貯留されていることが示唆された.さらに,主としてSiox含量から算出されるアロフェン含量は,必ずしも炭素貯留量が高い層で高いわけではなく,このことからも埋没後の炭素貯留が,主にAlとの複合体(Al-腐植複合体)の形成によって維持されることを示唆した. 九州南部大隅半島において,完新世の 7.3 cal ka BP に鬼界カルデラから噴出した鬼界アカホヤテフラ (K-Ah) と 6.4 cal ka BP に開聞火山群池田湖から噴出した池田湖テフラ (Ik) 間に,黒ボク土の生成時間スケールとしては,短期間の約900年間で生成した厚さ 10 cm 程度の埋没土壌層について,昨年度,採取した2地点の計8試料を用い,現在,加速器質量分析計による14C年代測定を行っている.まだ,結果は明らかでないものの,この結果から,ススキやチガヤなどの草本植生や,照葉樹も混じるような草本植生に由来する炭素が,埋没作用によって安定に貯留できるかが明らかになり,このような種類の炭素の貯留方法について示唆を与えることが期待される.
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