大気中二酸化炭素(CO2)濃度の変動をより正確に予測するために、陸上生態系によるCO2の吸収(光合成)と放出(呼吸)を高い精度で把握することが求められている。そこで本研究では、広大な面積を持つにもかかわらずこれまでデータが不足していた半乾燥地の草原生態系に着目し、CO2フラックスの広域空間分布を多地点移動観測という方法で実測し、さらにその制御要因を定量的に評価することを目的として研究を実施した。 平成24年度は、北緯47度、東経106度に位置するバヤンウンジュル村近郊の草原を対象として、8月下旬に1週間程度の現地観測を実施した。測定項目は、CO2フラックス、気象要素(気温・相対湿度・気圧・降水量・光合成有効放射)、土壌要素(地温、土壌水分量、土質)、植物バイオマスである。平成24年度の後半は、これまでの3カ年の現地観測によって得られたデータを統合的に解析し、大気-草原生態系間のCO2交換の空間分布がどの様な環境要素によってコントロールされているのか検討した。その結果、光合成速度・生態系呼吸速度のどちらにおいても、その空間分布は植物の地上部バイオマスによって大きく制御されているということが分かった。さらに、今後、衛星リモートセンシング等を利用して、半乾燥草原の広域CO2収支を推定することをめざし、反射率データから算出される種々の植生指数と現地観測で得られた植物地上部バイオマスとの関係について解析し、モンゴル国の半乾燥草原ではNormalized Difference Vegetation Index (NDVI)が地上部バイオマスの最も良い指標となるという結果を得た。
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