研究概要 |
近年、宇宙線強度と雲量の間に相関があることが指摘されたが、その原因としてイオン誘発核による粒子生成が考えられる。イオン誘発核による粒子生成のプロセスを明らかにする事を目的として、都市大気(東京),山岳大気(富士山頂)において、小イオン濃度と同時に、エアロゾル粒子の粒径分布、ラドン濃度、宇宙線強度を測定し、その変動要因を調べた。 ・イオンカウンタを購入し、インレットを作成し、東京において正常に動作する事を確認した。 ・7月中旬から8月末まで、富士山山頂においてエアロゾル粒子の粒径分布、ラドン濃度、宇宙線強度と同時観測を行った。その結果、小イオン濃度から計算した電気伝導率は夜間高く日中低い日変化が確認された。また、エアロゾル粒子濃度との逆相関も確認された。しかし、1959年の観測結果と比べると半分以下となり、この50年の間に富士山頂の空気が粒子汚染されたことを示唆する結果が得られた。ラドン濃度との明確な関係は見られなかった。 ・11月から2月にかけて、新宿区神楽坂において小イオン濃度、エアロゾル粒子の粒径分布、ラドン濃度の同時観測を行った。やはり、電気伝導率には夜間高く日中低い日変化が見られたが、15~20年前より値が大きく、東京の空気がきれいになったといえる。ラドン濃度とは明確な関係は見られなかった。 今後、宇宙線強度も含め変動要因を検討する。また、2011年度は山頂と同時に太郎坊(1300m)においても同時観測を行い、大気境界層の空気の山頂への影響を評価する。さらに2012年1月~3月に行われる白鳳丸航海にて、海洋大気の観測を行う予定である。
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