研究課題
メタン酸化菌が行う副次的な硝化や脱窒反応とそれに伴うN_20生成について、多様なメタン酸化菌分離株を解析するために、昨年度に引き続き利用可能な株がほとんどない海洋性メタン酸化菌を環境試料から分離を行うとともに、すでに分離した複数の新規海洋性メタン酸化菌の性状解析、窒素代謝関連遺伝子の探索、高感度ガス分析手法の改良を進めた。昨年度までに、深海熱水活動域の主要微生物である二枚貝共生菌の近縁種を集積培養により得た。この菌は二枚貝共生菌とは16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性が98%と種レベルで類似性が高く、現場環境とほぼ同じ5℃で微生物マットを形成し高密度で生育する点からも二枚貝共生菌との類似性の高さが窺える。したがってこの菌は、これまで性状の分からなかった二枚貝共生菌を含む系統群のN_20生成への関与や、生態学的な影響を検討・考察する上で貴重な情報を与えてくれるものと期待される。しかし現段階では混在する従属栄養細菌の除去に成功しておらず、引き続きメタン酸化菌の純粋分離を試みている。また、すでに分離に成功した海洋性の新規メタン酸化菌3株(浅海由来2株、深海由来1株)について、その性状解析と利用可能な窒素源を調べた。深海堆積物中より得られた株は窒素固定能も有していた。それぞれの株の硝化能や脱窒能について、アンモニア、亜硝酸、硝酸、それぞれを単独で窒素源とした場合、あるいは複数加えた場合でどのように変化するか検討中である。また、反応による生成物を高感度で検出するため、ガスクロマトグラフの試料導入部の改良を引き続き行っている。、
2: おおむね順調に進展している
現在扱っているメタン酸化菌単離株は生育が良かったため、予定した実験が順調に行えた。
メタン酸化菌は、炭素や窒素の動態に深く関わる生態学的に重要な微生物であることから、その分離株を得ることは様々な生態学的研究に資するものであり、純粋分離の技術開発にも重点を置いて研究を進める。
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巻: Vol.61 ページ: 2646-2653
10.1099/ijs.0.028092-0
バイオサイエンスとインダストリー
巻: Vol.69 ページ: 55