本年度は、全球表層塩分の変動特性の解析を進めるための準備および基礎的な解析を行った。特に、Hosoda et al.(2009)による先行研究でも表層塩分変動量とそのメカニズムに対する関連性が指摘されていた、海洋表層における混合層深度の全球的な時空間変動特性に関する調査・解析を行った。連携研究者等との間で議論を行いながら、全球に展開されているArgoフロートの均一かつ高精度な水温・塩分データを用いて表層混合層深度の気候学的な季節進行や経年変動を求め、全球的な混合層深度の時空間特性を示すとともに、今まであまり着目されていなかった春季から夏季にかけて形成される浅い混合層について、正味の海面熱フラックスとの関連性について研究を進めた。その成果の一部は、国内学会で発表するとともに、論文としてまとめ、国際的な専門雑誌にも掲載された。そして、その過程で作成した全球混合層深度データセットは、インターネットを通じて一般に公開し広く利用できるように準備を進めている。また、表層塩分変動メカニズムを全球的に解析するために、1990年から2006年までの10日毎の海洋同化データを収集した。海洋表層における正確な塩分収支を求めるために、海洋内部の塩分や流速データだけでなく、海面からの淡水収支のパラメータについても収集を行い、大気や陸面からの淡水がどの程度塩分変動に関わっているかを正確に調べるために準備を行った。そして、この膨大なデータを格納、解析するためのデータサーバーおよび計算機、必要なソフトウェアの購入を行い、計算機環境の整備を実施するとともに、次年度以降の解析の準備が完了した。
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