平成24年度は,Argoフロート,衛星データ等を用いて,海洋表層での水温・塩分変動過程について解析を行った.特に,春夏季に海洋表層・亜表層が気候変動に果たす役割について解析を進めた.表層塩分変動と深く関連する表層の熱交換過程について,夏季の強い海面加熱の効果が,季節躍層上に形成される浅い混合層だけでなく,その下層にも貯熱されることを示した.また定量的な解析により,夏季の海面加熱が影響する深度を定義し,その深度変化が混合層深度変化と異なること,北太平洋における海域依存性についても示した.この海面加熱の浸透は,大気擾乱により下層にももたらされ,気候変動と密接に関係し大気海洋相互作用に直接影響する,海面水温を緩和する効果があることを示した.この成果を国際専門誌に投稿し,現在査読を受け修正中である. また,Argoフロート,衛星データを用いて,全球の表層塩分変動に関する季節性・海域性について解析を行った.このうち,特に熱帯太平洋域における解析を連携研究者と共同して進め,表層塩分が準10年周期で変動することを明らかにした.このことは,Hosoda et al.(2009)で明らかにした30年間の全球表層塩分トレンドのうち,熱帯域の低塩分化トレンドには,周期変動成分が含まれる可能性を示しており,表層塩分トレンドの定性的な分布に大きな違いはないものの,定量的な議論を行うためには,それぞれの海域でより長期にわたるデータを用いた詳細な解析が必要であると考えられる.この成果について国際専門誌に投稿し,現在修正中である. これらの成果は国内外の学会等で広く公表した.また,成果をWeb上でわかりやすい形で公表することを検討中である.さらに,アウトリーチの一環として,本研究で利用した観測データを広く知ってもらうためにパンフレット等を作成し,観測データの重要性と有用性を広く周知することに努めた.
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