研究課題/領域番号 |
22510027
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
道上 義正 金沢大学, 環境保全センター, 准教授 (90190678)
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研究分担者 |
神林 康弘 金沢大学, 医学系, 講師 (20345630)
中村 裕之 金沢大学, 医学系, 教授 (30231476)
人見 嘉哲 金沢大学, 医学系, 准教授 (70231545)
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キーワード | 多環芳香族炭化水素類 / アレルギー疾患 / 大気汚染 / 環境 / 健康影響 |
研究概要 |
本年度は、2011年1月~6月に毎日ハイボリュームエアサンプラーを用いて24時間捕集した大気粉塵(Total Suspended Particulate : TSP)量の測定とTSP中多環芳香族炭化水素類(Polycyclic Aromatic Hydrocarbon : PAH)の分析を行い、TSP濃度やPAH濃度の季節や黄砂日における特徴を把握することに取り組んだ。 TSP濃度は1月から5月になるにつれ高くなり、6月には低くなった。PAH濃度は1月と2月に高く、その後徐々に低くなっていった。季節によりTSP濃度とPAH濃度が異なることが分かった。 5月の黄砂日(気象庁の目視データによる:5/2、3、4、13)と非黄砂日のデータを比較すると、PAH濃度に差は認められなかった。TSP濃度に対するPAH濃度の比(×100,000)を比較すると、黄砂日(0.95±0.51)で非黄砂日(4.14±2.24)より有意に低いことが分かった。昨年度の黄砂日は、中国でPAH濃度が高くなる暖房期ではないため、黄砂の飛来によりTSP濃度は上昇したが、PAH濃度は上昇しなかったと考えられる。 本課題では、今まで行われなかった毎日のPAH濃度を把握することにより、TSP濃度とPAH濃度の変動を詳細に検討できる。また、この結果はデータベースとして使用出来、アレルギー疾患とPAHの関連を明らかにするために有用である。 ただし、1年(半年)のみのデータであり、中国の暖房期と非暖房期で黄砂に付着するPAH濃度や性質が異なることが考えられるため、更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
少量の大気粉塵を用いた多環芳香族炭化水素類の分析法の確立と2011年1月~6月に捕集した大気粉塵中多環芳香族炭化水素類の安定した分析に予想より時間がかかったため。 また、多くの大気汚染物質の情報を得るため、大気粉塵中遷移金属の分析も行うことにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
近年、黄砂飛来が11月や12月に観測されることもあるので、大気粉塵捕集期間を長くし、季節による大気粉塵や黄砂に付着した化学物質の特徴を把握する。昨年度のデータや気象庁の気象データや環境省の大気汚染データ(確定値)を用いて統計解析を行うとともに、2011年11月~2012年6月に捕集する大気粉塵中多環芳香族炭化水素類や遷移金属を分析する。 上記で得た結果を利用し、大気汚染と喘息患者の症状の関係を検討する。 多環芳香族炭化水素類が喘息に関与しうるか調べるために、喘息患者と健常者の血液を用いて、多環芳香族炭化水素類による好塩基球の活性化を検討する。
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