研究概要 |
本研究は佐渡島におけるトキ野生復帰において,トキが通年利用する重要な餌生物であるドジョウの生息量を,エコロジカルネットワークの再生という生態学的視点から,増加させるプロセスの確立を目的としている.佐渡島の河川におけるドジョウ生息量のポテンシャルマップ(事前研究)において,その生息量が大きいと示された国府川中下流に注目し,そこに流れ込む水路を対象に,1)河川一水路一水田間のネットワークの分断状況と,用排水の様式,水の流れを面的に把握し,2)排水路における魚類(ドジョウ)の生息量調査を33地点で行い,併せて物理環境調査(水深,流速,河床材料,植生カバー)も実施した.さらに,GISによる景観要因(標高,傾斜,水田面積,幹線水路までの距離等)の抽出も行った.局所・景観要因を説明変数に,ドジョウ密度を応答変数に用いて一般化線形モデルによる解析を行い,説明変数には全ての組み合わせを用いてモデリングを行い,AICによりベストモデルを選択した. 解析の結果,ベストモデルでは局所要因であるコンクリート(負の相関)と植生(正の相関)が選択され,景観要因では傾斜(負の相関)と周囲の水田面積(正の相関)が選択された.ドジョウが泥床を好むこと,植生が水路内の流速を弱めることから,これら2つの局所要因が選択されたと考えられる.景観要因についてはドジョウが傾斜の緩い水田地帯を主な生息場としているためと選択されたと考えられる.選択されたベストモデルの局所要因には調査データの平均値を代入,景観要因についてはGISを用いて計算した値を代入して,国仲平野の排水路を対象とした潜在的生息適地図を作成した.
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