近年、人為拡散による生物の侵入が増大し、生態系、身体・生命、農林水産業への被害防止は緊急の課題となっている。20年前に日本に侵入したオオクビキレガイは関東まで分布域を広げ、北九州市では藍島という閉鎖的環境に侵入した。本研究は、200万年前に我国に侵入したヤマボタルガイの繁殖戦略、侵入方法、拡散速度などと比較し、オオクビキレガイの今後の推移を予測し、生態系や人間生活に与える影響を考察するものである。 ・国内のオオクビキレガイは、福岡県、山口県でほぼ連続的に分布しているが、その他の地域では不連続・局所的に分布。これは定着後の経過時間によるものと考えられる。 ・国内各地域のオオクビキレガイでは遺伝的分化が見られない(武田・松隈・三島2007)。確認のために、日本各地の集団について、ミトコンドリアCOI遺伝子領域による解析個体数を増やした。 ・核のリボソーマルRNA遺伝子の遺伝子間領域(ITS2)においても遺伝的分化がみられなかった。 ・マイクロサテライトマーカーとしてLance et al.(2010)が利用できることが分かった。 ・1997年から2009年までの植物検疫の陸・淡水産貝類発見記録から、貝類の構成、発見回数、随伴植物毎の発見回数、検疫所毎の発見回数を整理したが、オオクビキレガイは含まれていない。 ・オオクビキレガイは気温9~29℃、湿度80%以上で活動する。夜行性であるが、暗室での飼育では体内時計を持つ可能性が示唆された。 ・繁殖調査は九大キャンパス(福岡市箱崎)の個体を使って実験中である。 ・他家受精を行うヤマボタルガイの分布、国内の試料を収集し、遺伝的構造の解析を進めている。
|