研究概要 |
遊泳能力の乏しい冷水性底生魚カジカ種群をモデル生物とし, 水温上昇による生理生態的ストレス因子が彼らの生残,移動,生殖生理に及ぼす影響について野外調査と室内実験の双方のアプローチから検証した。河川工作物は両側回遊型(中卵型)および河川陸封型(大卵型)の遡上を実質的に妨げていた。低水温群で頻繁に見られた小卵型の雄の営巣行動は,高水温群(河川水よりも 4~5℃高温)で殆ど確認できなかった。中卵型仔魚の生残率が高温飼育条件(15℃) で最も低かったことを併せると,水温上昇がカジカ種群の繁殖活性や初期生活期の生残へ及ぼす影響が示唆された。これらの成果は,水温上昇に伴うカジカ種群の生態・生理両側面へ及ぼす負の影響を評価するうえで,有効な指標として役立つと期待される。
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