研究概要 |
粒状ナノ粒子フラーレン(C60)とその針状結晶であるフラーレンナノウイスカー(FNW)の細胞増殖能など一般的細胞毒性について(試験試料濃度0.1-10μ/ml)、マクロファージ、線維芽細胞、肺胞上皮細胞など各種培養細胞を用いて評価した。その結果、(1)FNW,C60共にマクロファージ系細胞での貪食が著しく、マクロファージの細胞増殖を促進する傾向を示したが、両物質間の形状の差による影響は認めなかった、(2)両試験試料はLDH露出試験による細胞障害性は示さず、Ames試験による変異原性試験でも両者共に陰性を示した。マウス気管内投与によるIn vivo実験では、単回投与(0、1,10,100、1000μg/匹、1群5-6匹)1週間後と結晶シリカで肺線維化が観察される6ヵ月後に評価を行った。急性期の所見では、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の肺胞マクロファージが、C60, FNWを活発に貪食している像が観察された。特に高濃度FNW群で、肺胞マクロファージの過食による細胞破裂像が多く観察された。しかしながら、BAL中の細胞数、細胞分画像、蛋白量及び循環血液中の血球数や血液像には対照群と比較して明確な差は認めなかった。投与6ヵ月後のBALF所見では、急性期と同様にC60,FNWを貪食している肺胞マクロファージを観察したが、その数は急性期に比べて明らかに減少した。100μg/匹の同一条件下で観察した結晶シリカ群では、BALF中蛋白量の増加を認めたが、FNWとC60の試験試料群では蛋白量への影響は認めなかった。気管内単回投与6ヵ月後の肺病理所見で、試験試料投与群の1例に異常所見を認めたために追試実験を実施しているが、投与6ヶ月では異常所見は観察されず、現在さらに長期にわたり経過観察を行っている。
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